瀬尾公治短編集 ラブレター感想 【ネタバレ注意】

漫画感想

瀬尾公治の短編集作品の1つに2007年に発売された「ラブレター」。

タイトルと同じ実際の手紙と出来事を漫画化した「ラブレター」と過去に読み切りとして掲載されたバージョンの「HALF&HALF」、そして完全に読み切り作品の「梓颯(あずさ)」の3作品が収録されてます。

HALF&HALFは後に連載作品にもなったので、割愛。梓颯も古いボツ作品のリメイクなので割愛。

という訳で今回は表題作品の「ラブレター」に関して感想などを。

実際の出来事を漫画化したラブレター

NNNドキュメントで一度放送された「婚約者からの遺書」で紹介された当時10代だった智恵子さん(仮名かな?)が戦時中に体験した恋愛と文通、そして婚約者からの手紙で構成されたこの作品は前編、後編と短編集の半分を占めている完全に書き下ろしの作品です。

よく、特攻隊で亡くなった方々の遺書や、戦時中の手紙などが紹介される番組が当時は夏の終戦記念日前後にあったので筆者自身も何故かこのエピソード自体は知ってました。

戦時中の恋愛観が良く分かる

今、自分たちの世代では考えられないほど厳格だったほんの60年くらい前の実際の恋愛模様。

作品でも描かれているのですが、交際を申し込むことは即ち結婚を前提にした申し出であるほど、恋愛というものへの価値観の違った時代。

この作品の主人公は瀬尾公治作品でよくある男性ではなく、遺書を預かった智恵子さん目線。

漫画の中で、瀬尾公治先生が実際に智恵子さんに取材をして話を聞いたエピソードを入れつつ、やり取りのあった手紙の文章などがうまく織り込まれています。

よく、戦時下の遺書などは美しい文章が多いというイメージがありますが、この作品で紹介されている遺書も言葉選びが非常に美しく、作品の内容も相まって結構感動します。

なんだったら泣いてしまう←。

ラブレターのあらすじ

智恵子さんは戦時中に恋愛をして、学生時代から文通という形で交際をするものの、その背景では日本が第二次世界大戦中であり、本土空襲も行われているような状況です。

そんな中、学生であった智恵子さんと、その婚約者であった穴澤利夫さん。

戦争が進むに連れて徴兵免除がなくなった頃、穴澤さんは自ら志願して、当時一番死亡率が高かったと言われる陸軍航空隊に志願します。

戦況の悪化が進んでいく中、智恵子さんと穴澤さんは当時ではまだ若いとされていた結婚を許されて婚約者となりますが、そんな時に智恵子さんの元に届く手紙が衝撃的です。

還らざる任務につくことが決まった。会いに来て欲しい。

ラブレター後編の手紙より引用

それすなわち、神風特攻隊の任務です。

遺書に残された印象的な言葉

穴澤さんが特攻隊に出撃することが決まって、智恵子さんに残した遺書には飾りのない純粋な感謝と、既に死ぬことが分かっている身で婚約者であっても、自分は過去の人間になるのだから前を向いて自分を引きずらないようにといった内容が書かれています。

そして、唯一の未練であろう智恵子さんに会いたい、話したいという言葉も。

事実は小説より奇なりとは言いますが、この作品を瀬尾公治先生が漫画として遺したということにも意味があるように感じれるほど、短く濃い作品です。

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